三舟の才(文学史・本文・現代語訳・解説動画)

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今回は『大鏡』の「三舟の才」です。
「さんしゅうのざえ」「さんせんのさい」などいろいろな呼ばれ方があります。

文学史

作者

未詳

成立

11世紀末までに成立

ジャンル

歴史物語

内容

歴史物語の最高傑作と呼ばれ、紀伝体で書かれている。「四鏡」の第一作。大宅世継(おおやけのよつぎ)夏山繁樹(なつやまのしげき)という2人の老人が語る形式。藤原道長を中心に描くが、道長賛美で終わらない鋭い批判精神がある。

本文

一年、入道殿の大井川に逍遥せさせ給ひしに、作文の舟・管絃の舟・和歌の舟と分たせ給ひて、その道にたへたる人々を乗せさせ給ひしに、この大納言の参り給へるを、入道殿、「かの大納言、いづれの舟にか乗らるべき。」とのたまはすれば、「和歌の舟に乗り侍らむ。」とのたまひて、詠み給へるぞかし、

小倉山嵐の風の寒ければ 紅葉の錦着ぬ人ぞなき

申し受け給へるかひありてあそばしたりな。御自らものたまふなるは、「作文のにぞ乗るべかりける。さてかばかりの詩をつくりたらましかば、名の上がらむこともまさりなまし。口惜しかりけるわざかな。さても、殿の、『いづれにかと思ふ』とのたまはせしになむ、我ながら心おごりせられし。」とのたまふなる。一事の優るるだにあるに、かくいづれの道も抜け出で給ひけむは、いにしへも侍らぬことなり。

現代語訳

ある年、入道殿が、大井川で舟遊びをなさった時に、漢詩文の舟、音楽の舟、和歌の舟と三つにお分けになって、それぞれの専門の道に優れている人々をお乗せになったが、(そこに)この大納言殿が参上なさったので、
入道殿が、「あの大納言は、どの舟にお乗りになるだろうか」とおっしゃると、
(大納言は)「和歌の舟に乗りましょう」とおっしゃって、お詠みになった歌なんですよ、

小倉山や嵐山から吹き下ろす嵐の風が寒いので、紅葉の葉が散って、みんなが錦の衣を着ているように見える

自ら進んでお願いして和歌の舟に乗っただけのことはあって、素晴らしい歌をお詠みになったことですなあ。
大納言殿自らもおっしゃったとかいうところでは、「漢詩の舟に乗ればよかったよ。そうして、この舟(和歌の舟)と同じくらい素晴らしい詩を作ったならば、きっと名声が上がるようなこともまさっただろうに。残念なことであったなあ。
それにしても、入道殿が『どの舟に乗ろうと思うか』とおっしゃったのには、我ながら自然に得意な気持ちになってしまった」と、おっしゃったとか言うことです。
一つの道に優れていることさえ、珍しいことであるのに、このようにいずれの道でも抜きん出ていらっしゃったとかいうのは、昔にもございませんことである。

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