初冠(文学史・本文・現代語訳・解説動画)

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今回は『伊勢物語』の「初冠」を解説していきたいと思います。

文学史

作者

未詳

成立

10世紀中ごろ

ジャンル

歌物語

内容

全125段。在原業平(ありわらのなりひら)だと思われる主人公の一生を綴った一代記風の物語。日本最古の歌物語。多くの段で「昔、男ありけり。」から書き始められる。

本文

昔、男、初冠して、奈良の京、春日の里に、しる由して、狩りに往にけり。

その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。この男、垣間見てけり。

思ほえず、ふるさとにいとはしたなくてありければ、心地惑ひにけり。男の、着たりける狩衣の裾を切りて、歌を書きてやる。その男、しのぶずりの狩衣をなむ着たりける。

春日野の若紫のすり衣しのぶの乱れ限り知られず

となむ、追ひつきて言ひやりける。ついでおもしろきことともや思ひけむ。

陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに

といふ歌の心ばへなり。昔人は、かくいちはやきみやびをなむしける。

現代語訳

昔、ある男が、成人して、奈良の京、春日の里に(そこを)領有している縁で、鷹狩りに出かけていった。その里に、とても若々しく美しい姉妹が住んでいた。この男は、(その姉妹を)垣の隙間からのぞき見てしまった。

思いがけず、(さびれた)旧都にはとても不釣り合いな様子で住んでいたので、(男は)心が乱れてしまった。(そこで)男は(自分が)着ていた狩衣の裾を切って、歌を書いて送る。その男は、しのぶずりの狩衣を着ていた。

春日野に生える若い紫草で染めた摺り衣の乱れ模様のように、私があなた方を思う心の乱れは限りを知ることができないほどです

と、すぐに歌を詠んで送った。事の成り行きを趣深いことでもと思ったのだろうか。

この歌は、 陸奥のしのぶもじずりの乱れ模様のように(私の心は乱れております。あなた以外の)誰のせいで(心が)乱れはじめてしまった私ではないのに という歌の趣向である

昔の人は、このように情熱を込めた風雅な振る舞いをしたのだった。

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