今回は『枕草子』の「雪のいと高う降りたるを」を解説していきたいと思います。
文学史
作者
清少納言
成立
1000年ごろ
ジャンル
随筆
内容
「方丈記」「徒然草」とともに古典三大随筆の一つで、日本最初の随筆文学。
明るく知的な「をかし」の文学として知られている。
本文
雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子参りて、炭櫃に火おこして、物語などして集まり候ふに、
「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ。」
と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせ給ふ。
人々も「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。なほ、この宮の人にはさべきなめり。」
と言ふ。
現代語訳
雪がとても高く降っているのに、(普段なら雪景色を眺めるために格子は上げてあるが)いつもと違って御格子をお下げ申し上げて、炭櫃に火をおこして、世間話などをして、(私を含めた女房たちが、中宮様の前に)集まってお仕えしていると、
(中宮様は)「清少納言よ、香炉峰の雪は。どうであろうか」とおっしゃるので、(私が)御格子を上げさせて、御簾を高く上げたところ、(中宮様は)満足そうに微笑みなさる。
周りにいたその他の女房たちも、「そのような詩句は知っているし、和歌などにさえ詠み込んだりするが、(簾を捲り上げるというのは)思いもよらなかった。やはりこの中宮様にお仕えする人としては、(あなたは)ふさわしい人であるようだ」と言う。
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