芥川(文学史・本文・現代語訳・解説動画)

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古文現代語訳テスト対策古典解説

今回は『伊勢物語』の「芥川」を解説します。

文学史

作者

未詳

成立

10世紀中ごろ

ジャンル

歌物語

内容

全125段。在原業平(ありわらのなりひら)だと思われる主人公の一生を綴った一代記風の物語。日本最古の歌物語。多くの段で「昔、男ありけり。」から書き始められる。

本文

 昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。行く先多く、夜も更けにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓・胡簶を負ひて戸口にをり。はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼、はや一口に食ひてけり。「あなや。」と言ひけれど、神鳴るさわぎに、え聞かざりけり。やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て来し女もなし。足ずりをして泣けども、かひなし。

白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へて消えなましものを

現代語訳

昔、男がいた。手に入れることができそうになかった女を、何年にもわたって求婚し続けていたのだが、やっとのことで盗み出して、とても暗い夜に逃げて来た。芥川という川(のほとり)を(女を)連れて行ったところ、(女は)草の上に降りていた露を(見て)、「あれは何なの。」と男に尋ねた。(逃げるべき)前途は遠く、夜も更けてしまったので、(男は)鬼のいる所とも知らないで、雷までもとてもひどく鳴り、雨も激しく降ったものだから、荒れてがらんとした蔵に、女を奥のほうに押し入れて、男は、弓や胡簶を背負って戸口に座る。早く夜も明けてほしいと思いながら腰を下ろしていたのだが、(その間に)鬼が、たちまち(女を)一口で食べてしまった。(女は)「ああっ。」と言ったのだが、雷の鳴る騒がしい音のために、(男は)聞くことができなかった。次第に夜も明けていくので、(蔵の中を)見ると、連れて来た女もいない。(男は)じだんだを踏んで悔しがって泣いたけれども、どうにもならない(。そこで男はこんな歌をよんだ)。

「あれは真珠かしら。何なの。」とあの人が尋ねたとき、「露だよ。」と答えて(その露が消えるのと同じように私も)消えてしまえばよかったのになあ。

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